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非(ソフトウェア)エンジニアの生存戦略

オピニオン

先日HashHubで「非ソフトウェアエンジニアの生存戦略」という題で簡単なプレゼンをしました(同席したTheCoffeeTimesさんは0xの概要と最新情報についての発表を行いました)。

そのときの発表の内容を更に要約して、本記事で公開しておきます。

16年の秋頃に勉強がてらビットコインの開発者カンファレンスのトランスクリプトの全訳を試みたことがあります。全部で日本語にして15万字くらいになり、専用のブログを作って公開していましたが、全くバズりませんでした。最初の記事を大石さんがリツイートしてくださり多少のPVはありましたが、それ以降は鳴かず飛ばずで、そのまま終了しました。

このときの発見は「スキルを素数的に考えて、自分のスキルセットを構築すれば良いのではないか?」ということでした。語学や数学のような汎用性のあるスキルを小さな素数、限定された領域でしか使えず獲得コストの高いスキルを高い素数として捉えます。

上のスライドはあくまでも例です。もちろんスキルは主観的なものですし、社会状況によってスキルの汎用性や専門性は大きく変わってしまうので、素数ほどの客観性はありません。例えば英語は数百年前は専門性の高いスキルでしたが、今はそうではありません。

長文英語の和訳は単なる「英語から日本語への移し替え」に過ぎないので、英語の能力しか使ってません。3(英語力)をひたすら掛け合わせて、プロダクトを作っていきます。3しか使ってないので、ターゲットは3を持っていない人になります。重要なのは「2(時間)も3(英語力)も持っていない人」はターゲットにならないことです。何故なら2は提供していないからです。

ただの翻訳を要訳に変えると「時間の節約」を提供することができ、2と3を持っていない人をターゲットにできます。更にその要訳が分かりやすい文で構成されていれば、池上彰的なポジションを築くことができます。

このイメージを使って書いた記事の例が上のスライドになります。いずれの記事もそれなりに読まれ、ブランド構築に寄与しました。

それっぽく分解していますが、実際にはMECEで分解できるわけではありません。漏れもあるし、重複もあります。あくまでイメージの補助としてしか使えません。

ただし、単に素数を意識して、それらを掛け合わせたらブルーオーシャンを見つけられるかと言えばそうではありません。例えば上の記事は書くのに6~8時間かかりましたが、あまり良い反応は得られませんでした。この記事を読むターゲットが「暗号通貨とアラビア語とイスラーム金融の3つに興味のある読者」だったからでしょう。暗号通貨×アラビア語、あるいは暗号通貨×イスラーム金融だけでもかなりニッチなのに、この3つを全て掛け合わせるとニッチになり過ぎます。

当時はConsenSysが中東に進出し始めていたり、サウジアラビアがブロックチェーンに興味を持っていたりしていました。アラブ地域でも暗号通貨が盛り上がる可能性があるなら、是非ともそのポジションは取りたいと思い、上の記事を書いたわけですが、結果は芳しいものではありませんでした。

ここで非エンジニアの役割を考えてみましょう。高度な専門領域がなくてもやれることはあるはずです。

お金を稼ぐ手段は二つ

  1. 自分で稼ぐ
  2. 稼げる人を助ける

という話がありますが、それと似たようなもので、専門領域にいる人間(且つ組織のマネタイズに大きく寄与する人間)を助けることで自身の価値を発揮することも可能です。ただし、プロセスを規格化し、再現性のある形で情報を処理しないと二度手間になるどころかお払い箱にされてしまいます。

また手持ちの素数で因数分解できるように、対象物に操作を加えることも可能です。そうすれば近似値が使えるからです。大胆なメタファーの使用はこれに該当します。比喩なのに本質を表している気がするのは、「自身では扱えない素数が消えたことによってむしろクリアになったと誤解できること」、「近似値であっても構成要素が全て消えるわけではないので、類似性は残っていること」が影響しているのでしょう。

ただし、基本的に「物事を簡易化して伝える人」には何らかの意図があると考えるのが普通で、客観的に見えても近似値を使っている以上、情弱搾取の危険性がありますし、仮に意図的でなかったとしても、とんでもない誤解を発生させるケースもありますので警戒する必要があります。

語彙が豊かな人は適切な方向に適切な長さの矢印を伸ばすことができ、最短距離で目的の概念を指し示すことができますが、語彙が貧弱な人は回り道をしたり、目的地の周辺で妥協したりする必要があります。

理解の網の概念が粗いので、適当な格子点で妥協するしかありません。

これを逆手に取って、受け手のリテラシーに合わせた情報発信を行うことでポジションを取ることも可能ですが、倫理観がなければ、ただの情弱搾取野郎で終わってしまいます。

基礎体力を付けて生存の条件を満たしつつ、応用分野でポジションを取りに行きます。とりあえず先端分野は開発者に任せましょう。専門的すぎる領域は仮に理解できたとしても高コストな上に市場が小さいので、脆弱になりがちです。

素数とスキルのペアはあくまで私の主観的なイメージです。これらのスキルはどの業界でも必要な汎用性の高いスキルなので、仮に暗号通貨領域から撤退することになったとしても無駄にはなりません。暗号通貨業界で生き残るのは簡単なことではないので、常に「こんなことをしても無駄なのでは…」、「半年後に生き残ってる自信がない」という気持ちが沸き起こってきますが、つぶしの効くスキルを習得していると思えば多少は気が楽になります。

専門家っぽく振る舞える領域を見つけて、さくっと自分のポジションを作って、マネタイズしたりブランディングしたりしたくなりますが、基礎もないのに自分を急かしても中長期的には首を絞めてしまうと思っています。この業界、英語か中国語ができないとポジションを取る準備すらできませんし、短距離を早く走るのではなく、長距離を長く歩こうと思えば他者とのつながりやストレスマネジメントが必要になってきます(こういう戦術が必要ないほどに優秀な人もいますが、そういう人は本記事を読まないのでここでは考慮しません)。

需要が見込めても供給も多かったらポジションを取るのは大変です。今からビットコインやEthereumでポジションを取るよりも、暗号通貨企業の企業研究をしたり、経済理論を応用したり、PoS型プラットフォームの研究をしたり、ブロックチェーン×中国語の総合メディアを運営したりする方が遥かに楽でしょう。

特にPoS型、PBFT型プラットフォームは日本では手薄な印象で、自分が今ゼロから始めるならDfinity, EOS, Tezos, Aeternity, Zilliqa, Tendermint等を対象にしてみると思います(※これらのプロジェクトのトークンに価値があるかどうかは別の話)。

中国語のポジションも空いています(暗号通貨に限らず)。自分も三ヶ月くらい集中投下して中国語のレベルを上げて、ポジション取ろうかと悩みました(諸事情あって別の言語を習得しなければならないので延期しましたが)。

※専門性→必要に応じて言語学習の方が楽で、言語習得→勝てそうな分野を探すといとう流れは熱量の維持という点でも合理性の点でも厳しそうですね。

分解する癖を付けて、分解の高速化、高精度化を狙います。また、これらのプロセスを他人に説明できるだけの表現力を身につけることで、ビジネスディベロッパーのポジションを築くことが可能になります。

非エンジニアというよりも、定性的に物事を処理しなければならない立場にいる人間の苦悩ですが、「取扱情報量のスケールの難しさ」、「要求水準の意外な高さ」、「暗中模索状態」、「鈍行成長」などの課題があります。

あれ?だったら、そんな茨の道を歩まなくても…

もうこれで良いのではないか…笑

真面目に考えると、非エンジニアがエンジニアとコミュニケーションを取れるようになり、内部調整や渉外をできるようになると結構強いです。英語か中国語ができて、暗号通貨の理解があり、エンジニアとコミュニケーションも取れるとなると、ビジネスセンスが多少なくても差別化はできます。

あと「少数精鋭型のチームにいるエンジニアは全員凄腕で、給与は年数千万」みたいな組織もあるんですよね。このとき少しだけ技術的な問題が出てくると、営業部隊はこの凄腕エンジニアに質問しないといけないわけです。それが積もり積もって1ヶ月に20時間もエンジニアチームの時間を消費しているとすれば組織にとって大きな損失です。

ちょっとしたコードなら読める営業担当とかAPIを少しだけ使った経験のある企画担当とかがいると重宝するわけです。なので、スキルアップ、キャリアアップのためにも非エンジニアがエンジニアになる(その境をなくしていくこと)には大きな意味があると思います。

生存しましょう:)