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暗号通貨のトークンモデル分析の現状について

シリーズ

「どうすれば価値の裏付けのない暗号通貨を適切に評価できるか」は暗号通貨領域において、そこそこホットなトピックであり続けています。この記事では自分が知っている範囲のトークンモデル分析について概観します。

投資家はトークンモデルを深く理解し、まだ知られていない事実なり相関なりを知ることができれば、大きなリターンを確保できるため、多くの投資家やVCがトークンモデルの確立を目指してきました。

またパブリックチェーンのコインやトークンはそれらが金銭的な価値を持つことを前提にインセンティブ設計を行っており、またそれがセキュリティにも直結するので、どのようにしてトークンに価値を滞留させるかは一つの課題となっています。

結論からいえば、既存の金融市場のようなバリュエーション手法は存在せず、未だにトークンの価値はあやふやなものになっています。このあたりはPlaceholderやMulticoin Capitalが豊富なレポートを提供しているので、それらのレポートを読めば大体の流れは分かります。

トークン設計のトレンド

CAとC/TからSoVへの逃亡

Capital Assets(CA)は富を生み出すアセットのことで、PoSのステイキングやEdgewareのロックドロップ、Livepeerのmerkleマイニングなどが部分的に当てはまります。

Consumable/Transformable Assets (C/T)はいわゆるユーティリティトークンとも呼ばれるもので、サービスを受けるために必要なトークンです。用途を前提にしているため、「将来的な需要を予測することができれば、その数値をDCF方式で割り引くことで現在価値が分かるのでは」というのがPlaceholderのChris Burniske氏のINETモデルの前提となっているものです(その後、Burniske氏は「全てのトークンに対してINETモデルを適応するのは誤りだった」と修正しています)。

ところが、CAやC/Tのみに基づいたトークンモデルにしてしまうとハリボテがバレてしまいます。実際のところ、無意味にSoV性を目指したり、SoVへの移行の余地を中途半端に残すくらいならCAやC/T方面に張った方が健全だと思うのですが、夢追い人が現実を見て求職活動をし始めた途端に恋人に振られる現象と同じで、SoV性への道を捨てた途端に、インフレの副産物でしかない名目トークン数の増加や存在しないユーティリティの権利に基づいた価値が算出されてしまうため都合がよくありません。

最初の暗号通貨であるビットコインがSoVとして注目されたことで現在の地位が確立された上に、CAとC/Tのみに基づいたトークン設計を行い屍となった多数のICOコインを経て、世は大SoV時代へと突入しました。

また、スマートコントラクトプラットフォームに価値が付きやすいのも似たような理屈で、「その上に築かれるアプリケーション次第ではそのベースとなるチェーンのネイティブコインの価値も上がる可能性がある」という開かれた構造になっており、その余白に描ける夢があるからでしょう。

この点においてMulticoin Capitalは先見の明があり、「EOSも有用性の向上に伴って徐々にSoV性を持つのでは」という仮説に従ってEOSに投資をしましたが、2018年に爆死しているので、理論の説得力と実際の投資リターンは必ずしも一致しないのが厳しいところです(BNBへの投資では大成功している模様です)。

またトークンにガバナンス機能を付ける理由はおそらく2つあって、1つは分散性を偽装することによって、証券性を持つトークンの違法性やプレマインを行った組織への懲罰を避けるためで、もう1つはクリプトネットワークの所有権をガバナンスという形で分割して各トークンに紐付けるためだと私は解釈しています(両方ともただトークンにガバナンス機能を追加すれば達成できるものではありませんが)。

ちなみに、CA or/and C/T→SoVだけではなく、ステイキングを導入することによってC/T only→C/T+CAにモデルチェンジするトークンもあります。

胡散臭いビットコインの価格分析は正しい

多くの投資家やファンドがオンチェーン活動やマイニングの損益分岐点、さらにはGoogleでの検索トレンドなどを用いてビットコインの価格を予想してようとしているのは暗号通貨外の人間から見ると胡散臭さが拭えません。

しかし、上述の通り暗号通貨の大半はビットコインのSoV性と幻想によって成り立っています。とすると、CAやC/Tに対してDCFや債権の価格算出モデルなどの金融領域のカッコイイ手法を使ってトークンモデルを分析をするよりも、SoVと幻想に焦点をあてて仮説を立てて投資を行ったほうが高いリターンが見込めます。なので、これらの胡散臭そうに見える分析は圧倒的に正しい方向の努力と言えそうです。

また、事業者としてはcapitalの部分ではなく、programmableの部分に焦点をあててcrypto assetを捉え、先を見据えて事業展開するのも2017~18年の歴史の活かし方として非常にセンスを感じます。

SoV以外のトークンモデル

現状、CAやC/Tに基づいて時価総額を正当化できそうなのは私の知る限りではMakerDAOのMKRくらいで、更にMCDになるとMKRのユースケースも増えるはずなので楽しみにしています。

ただしトークンモデルを論じる際に大事なのは、

このツイートに書いたようなことです。MKRの時価総額が正当化できそうなことと、MakerDAOが有望であり、且つEthereumにとって優良なプロジェクトかは別の話で、これらは独立したものとして考えなければなりません。

このような話はTokenLabでも頻繁に共有しているので、興味があれば購読してみて下さい。レポートの見本はこちらで閲覧できます。

またトークンモデルの話に興味がある方がいればTwitterで問いを共有して頂けると非常に嬉しいです:)

シリーズトークンモデルについて考える暗号通貨
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