Ethereumは現在PoW(プルーフオブワーク)を採用していますが、将来的にPoS(プルーフオブステイク)への移行を計画しています。PoWもPoSもどちらもコンセンサスアルゴリズムの一種ですが、マイナーがブロックの採掘を試みる際に、その採掘確率を左右する因子が異なります。PoWはネットワークに提供した計算力に応じて、PoSはネットワークに提供したステイク(賭け)に応じて、それぞれブロック採掘の確率が決定されます。ネットワーク全体の10%の計算力、もしくはステイクを持っているマイナーが、次のブロックを掘り当てる確率は10%ということです。簡単に言えばステイクというのは、保有しているETHとほぼ同義(厳密には保有=ステイクではない)なので、所有しているETHが多ければ多いほどリワードを獲得できる確率が多くなります。
PoWとPoSの利点と欠点については様々な議論がありますが、レファレンスとして使える定期的にアップデートされている資料が少ないので、また機会があればまとめてみたいと思います。この記事で関心があるのは、「Metropolisを経てSerenityに移行し、EthereumがPoSを採用した際に、自身が所有しているETHをステイクしてリワードを得るにはいくらのETHが必要か?」ということです。
結論からいえば、Redditでのヴィタリックの発言によると「最初は1000ETH程度、Shardingが完成すれば10ETH程度になり得る」とのことです。これは今年8月のポストなので、恐らくこれがPoSの最新情報だと思いますが、今年4月のポストでは「ガス代の支払いを考慮すれば、1000~4000ETHなければ収益は見込めないだろう」と発言しており、短期で必要なETH数が大きく変動しているので、今後もアップデートされていくと思います。
またPoSへの移行もいつになるか現時点で判明していません。Metropolisの前半部分であるByzantiumは無事にハードフォークを完了しましたが、後半部分のConstantinopleの実行時期は不明です。EthereumがPoSに移行しようとする際に、PoS移行組とPoW維持組で分裂する可能性は高そうですし、PoSの手法にもVitalik考案PoS(Friendly Finality Gadget = FFG)とVlad考案PoS(Correct-by-Construction = CCD)があり、どのような手法を実装するかにはまだまだ議論と実験が必要な段階です。
※今月27日にETH NEWSから記事が出ており「次のハードフォークでCasperが実装されるかもしれない」とのことです。ただし次のハードフォーク=Constantinopleがいつになるかは未だ不明です。
Ethereum Stepping Stones: Constantinople And Casper – ETHNews.com
ちなみにPoSでは規模の経済が働かないとされているので、ステイクする量に応じて採掘確率を上げるための費用が下がったりはしないはずです。またPoSにもNothing at stake等の問題があるのですが、懲罰的なPoSアルゴリズム(Slasher)などの手法がVitalikやVladから考案されています。
PoSを採用しているコインにはPosを最初に実装したPeercoinや、DASHからのフォークであるPIVXがあります。PIVXはBitcoin Unlimitedによるハードフォークとそれに伴うビットコインネットワークの分裂が騒がれた際に、DASHの高騰に伴う形で価格が30倍にも膨らんだコインです。開発状況は全く追っていませんが、メディア発信に積極的で、暗号通貨について調べている際に、たまに公式ブログに行き着くことがあります。PoSはPoWに比べて情報が少なく、特に日本語での情報は限られているので、今後もこちらで共有していきたいと思います。
参考資料
A (not so sneak) peek at the current version of the Casper contract : ethereum
Any updates on Ethereum’s POS? : ethereum
Slasher: A Punitive Proof-of-Stake Algorithm – Ethereum Blog