TOEICやTOEFLをクリアした後、どのように語彙力をネイティブレベルまで伸ばしていくか?

「語学は歳を取ると習得できなくなる」ことの根拠は様々だと思いますが、最も深刻な理由は「歳を取ると語彙を大量に獲得できなくなるから」でしょう。成人してからの外国語学習の難しさについてはリスニングや発音等のオーラルコミュニケーションに焦点を当てる言説が多い印象を受けますが、オーラルコミュニケーションはむしろ音声学の成果を活用することによって矯正可能です(指導員は必要だと思いますが)。

英語の発音は歳を取ってからでも矯正可能

音声学を利用した英語学習に関してはまた機会を改めて書きたいと思いますが、竹林滋氏や松坂ヒロシ氏、あるいは洋書でも良ければPeter Roach氏の著作が非常に参考になります。一冊を選べと言われたら、神山孝夫氏の『脱・日本語なまり―英語(+α)実践音声学』で間違いないでしょう。著者は印欧語の専門家で、ロシア語の発音に関する著作もあるエキスパートです。

正確な発音を習得することによって聞き取れる音の範囲も一緒に広がっていくのですが、結局語彙がなければリスニングもリーディングも何もかもできないという残酷な事実に遅かれ早かれ苦しめられることになるので、早期の語彙力獲得は重要です。第二外国語や第三外国語を勉強するのは非常に楽しいのですが、英語以外の外国語に手を出す暇があったら英語の語彙獲得のために時間を割くべきというのが私の持論です。それなりに英語以外の外国語ができたとしても、情報の世界において最も多くのハブを持っているのは英語なので、到達可能な情報を増やし、更にその過程を効率化しようと思えば、どうしても英語が有利になってしまいます。第二外国語必修制度は第二外国語教員の雇用を守ること以外に何の効果もなく、学生の貴重な時間を奪うだけなので即刻廃止するべきでしょう(その代わり学びたい学生のためには別途コースを用意すべき)。

「英語上手いですね」レベルを超越した後の語彙獲得の目安となるボキャビル本

さて、以下ではTOEICやTOEFLで要求される語彙力を既に獲得した人間にもお勧めできるボキャビル(ボキャブラリービルディング = Vocabulary building)本について紹介していきます。最近では英単語を覚えるアプリやウェブサービスなどが多数登場していますが、一定以上の語彙に対応したものがないのと、例文機能が貧弱すぎてコロケーションを意識できないので私はほとんど使いませんでした。以下レベル順に3冊紹介していきます。

1100 Words You Need to Know

1100 Words You Need to Know

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Murray Bromberg Melvin Gordon
Barrons Educational Series Inc
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本家アメリカでも使われているボキャビル本ですが、TOIEC900くらいある人なら問題なく使えます。単語“帳”というよりも単語“ドリル”と表現したほうが正確で、1日に新しい単語が5つ登場し、それらの単語を使ったテキストを読みながら穴埋めをしたり、同意語を線で結んだりして、手を動かしながら進出単語を覚えていきます。イディオムもおまけで登場します。

週に5日間(何故か週休二日になっています)、42週で終わるように構成されているのですが、42週間もかけてやっていたらやる気が削がれるので、1日で1週間分をこなし、土日に復習、42日間で終わらせるくらいが丁度良いのではないかと思います。春休み、夏休みにおすすめです。私は第5版のもっと青々とした表紙のものを今はなきブックオフ白金台店で200円でゲットして使いました。最新版は2018年2月に発行されるようです。ロングセラーです。

Verbal Advantage: Ten Easy Steps to a Powerful Vocabulary
Charles Harrington Elster
Random House Reference (2000-09-26)
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『1100 Words~』に比べるとドリル色は減りますが、よりハードな本です。各章ごとに新出単語の紹介があり、その単語にまつわる歴史や類義語などが英英辞典並かそれ以上の情報量で紹介されていきます。文字数が多い上に情報密度も高いので、情報量が非常に多く、ページにぎっしりと詰められたテキストを見ると嫌気が差してくるのですが、著者の語彙に対する愛のせいか、興味深い情報を得られるので思ったより苦にならず、かつそれらのストーリーに結びつけて単語を覚えられるというボーナスがあります。

continuousとcontinualの違いは何かとか、この語源には実はこういう意味があるとか、語学に多少なりとも興味を持っている人にとってはなかなか面白い内容になっています。”読む”単語集という感じです。

語学オタクが、普段他人に話したいけど(誰も興味ないから)話せないようなことを、この本の執筆にぶつけてきている感じがして好感度が高いです。

Word Power Made Easy: The Complete Handbook for Building a Superior Vocabulary

Word Power Made Easy

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Norman Lewis
Anchor (2014-11-04)
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この本は類似するボキャビル本の中では最も難しい部類に入ると思うのですが、なぜか一番人気が高い気がします。小さなペーパーバックで、例によって質の悪い紙が使われているにも関わらず、ドリルを解くために頻繁に書き込みを行わなければならないという非ゆとり仕様になっているのですが、内容は非常に良く、また安価であるため文句は言えません。

単語のレベルの高さ以上に特筆すべきは、とにかくドリルをこなすための作業量が多く、「解こうとする→知らない単語が多すぎる→解答を確認して採点を行う→半分以上が不正解→悔しい」という泥臭いプロセスを何度もこなせるあたりが最高です。「単語を眺めたり、例文を読んだりしてるだけで単語を覚えられるわけがないでしょう?」という著者の態度が字面から伝わってくる、かなりエネルギッシュな本です。こちらのエネルギーもかなり消費されますが、英語非ネイティブの語彙習得において、一つの目標地点としてお勧めできる本です。

これらの書籍以外だと、GetUpEnglishがほぼ毎日更新されていて、例文の内容も面白いのでお勧めです。

ボキャブラリーの増強はお早めに

語彙力の増強は遅くても二十代中盤までに終わらせるのがベストです。ブルドーザーのように文脈などお構いなしにガツガツと新出単語を食べていけるのは若いうちだけですし、歳を取る毎に純粋に語彙の獲得のためだけに費やせる時間などなくなっていきます。そうなった時に、自分の視野の広がりに伴って増えていく読みたい洋書のために語彙を獲得しようとしても遅すぎます。

私はこのことに気付くのがやや遅く、英語獲得の波に完全に乗り切れなかったことを今でも悔やんでいます。

「単語力はあるはずなのに英語が思うように読めない…」場合は、句動詞かイディオムの理解が不足しているケースが多いです。これについても機会があれば書きたいと思います。