『マスタリング・イーサリアム』の翻訳に参加しました。

【これから「分散型取引所」の話をしよう】0xプロトコル上のリレイヤーとは何か? 2/n

これから「分散型取引所」の話をしよう

最近になってEthereumのネットワーク上に構築される分散型取引所(以下DEX)関連のプロジェクトが増えてきました。DEXやDAC(Decentralized Autonomous Corporation=分散自立型組織)の先駆けとしてはBitSharesというプロジェクトがあります。BitSharesのDEXではネットワーク維持費とスパム対策のために約定するか否かに関わらずオーダー毎に手数料で、マーケットメイクがしづらく、結果的に取引高が伸びにくいという問題があります。

2017年はモダンなDEXが熱い?

今年になって発足されたDEX、もしくはそれに準ずるものとしてはBancor, 0x, KyberNetwork, AirSwap等がありますが、本シリーズではオフチェーンで且つ分散型取引所として機能する可能性のある0xに焦点を当ててみたいと思います。

ちなみにBancorは準備金という概念を導入したトークンの交換メカニズム(※参考)、KyberNetworkはオンチェーン取引所、AirSwapはオフチェーン交渉/オンチェーン施行の分散型”交換所”といったイメージです。方向性の違いからかブロックチェーンの使い方やオーダーの扱い方に、さらにはトークンモデルにも様々な違いがあるため、それぞれが今後どのように発展していくのか楽しみです。また、いずれのプロジェクトもEthereumのネットワークを用いており、プラットフォームとしてのEthereumの存在感を感じずにはいられません。

0xプロトコルとは?

0xは今年8月にICOを行い約24億円を調達した後、ZRXトークンがICO終了から間もなくPoloniexに上場したことで話題になりました。KyberNetworkやAirSwapなどの類似プロジェクトも0xに続いてICOを行いましたが、0xプロトコルを用いるDappsやリレイヤーなどが既にある程度集まっており、比較的開発が進んでいる印象を受けます(コード等を監査して詳細に調べたわけではありません)。

リレイヤーは0xにおけるオーダーブックの管理人である

ここからは0xのホワイトペーパーを参考に、0xの重要な要素であるリレイヤーについてまとめていきます。以下の情報はホワイトペーパーの7ページに記載されています。

以下、抄訳。

マーケットを作り出すためには注文を出す場所が必要である。しかしながらマーケットの運営にはコストが掛かるので、インセンティブなしには誰もやりがたらない。そこで、0xではこの枠割を果たす者に取引手数料を徴収する権利を付与することにより、オーダーを管理する者を作り出す。このオーダーブックの管理人を0xではリレイヤー(Relayer)と呼ぶ。

この点において0xはAirSwapとは方向性が異なります。AirSwapはP2P形式の交換所に近いです。0xを交換所として成り立たせるためには、リレイヤーの招致が最重要ポイントであることが、この説明から分かります。リレイヤーとしての役割を果たすステークホルダーが実際に集まるのか、あるいは既に集まっているのかについては本シリーズの次の記事で検証したいと思います。KyberNetworkではKyberNetwork自身がメイカーとして機能するケースもあるようです。

リレイヤー自身がオーダーを約定させることはない。あくまでオーダーブックを管理するのみで、約定させるのはテイカーである。市場参加者はリレイヤーを信用する必要がない。

トラストレスにトークンの交換が実行されるのはDEXの醍醐味ですね。この点はAirSwapもKyberNetworkもほぼ同様です。

  • オーダーの段階ではテイカーのアドレスは明記されない(ブロードキャストされたオーダーは誰によっても約定される)
  • オーダーはFeeA, FeeB, feeRecipientというパラメーターを含む。feeRecipientにはリレイヤーが手数料を徴収するためのアドレスと手数料の情報が入れられる。約定した場合、手数料が指定のアドレスに送金される。
    ※FeeAはメイカーがリレイヤーに支払う手数料、FeeBはテイカーがリレイヤーに支払う手数料

手数料の交渉はオフチェーンで行われるためダイナミックな手数料体系の変更が可能で、FeeRecipientには任意のアドレスを指定できるため、取引手数料を複数のリレイヤー間で分割したり、貢献の度合いに応じて複数のノードに分配することが可能なようです。

メイカーとテイカー、そしてその二つをオーダーブックの管理を通して仲介するリレイヤーの関係が明確になってきました。次回は、0xプロトコルの肝となるリレイヤーの役割を果たすEthfinex等のプロジェクトについて紹介します。