今月、セキュリティとプライバシーの重点を置いたハードウェアを製造するPurismは、匿名性に特化した暗号通貨であるMoneroとの協業を発表しました。オンラインストアでの決済にMoneroの通貨であるXMRが使用できるほか、Liberem5のモバイルペイメントの標準機能としてMoneroが組み込まれる可能性もあり、仮に実現すれば一般ユーザー(Liberem5というギークなスマートフォンを持つユーザーが一般かどうかはさておき)への暗号通貨普及に一役買うことになりそうです。資金はクラウドファンディングによって既に調達済みで、ディベロッパーキットの発送は2018年1月、Liberem5本体の発送は2019年1月を予定しています。
パラノイア的に”フリー”に強烈なこだわりを持つPurism社
PurismはFreeをモットーにTodd Weaverによって設立されたサンフランシスコの企業です。2015年にはクラウドファンディングで目標額の236%である59万ドルもの資金を調達し、”完全なるフリー”を標榜するラップトップLibrem15を開発しました。Librem15はCore i7搭載、ソフトウェアは全てオープンソースのものが使用され、ユーザーはソフトウェアとハードウェアの全てをコントロールすることができます。
スマートフォンにもその理念を導入
今年8月、PurismはLibrem15同様にセキュリティとプライバシーに重点を置いたスマートフォンの製造計画を発表し、サイト上でのファンドレイジングを開始しました。既に目標額の120%である180万ドルが集まっており、前回以上の注目が集まっていることが見て取れます。
OSにはGoogle AndroidでもApple iOSでもなくオープンソースでフリーのPureOSが標準装備され、ほぼ全てのLinuxディストリビューションを起動することができます。大衆受けするスマートフォンとは程遠いですが、オープンソースの理念や、Self-sovereigntyを重要視するビットコイナーやギークは関心を持つでしょう。
Moneroをモバイルペイメント機能として標準実装か
PurismはEquifaxのハッキング事件が示したような中央集権的サービスが持つ脆弱性に対する懸念を示しており、当社の理念であるプライバシーとセキュリティに重点を置いた”フリー”の追求というあたりも分散型でパブリックチェーンが使われる暗号通貨との親和性が非常に高いように思います。
創業者兼CEOであるTodd Weaverは「Moneroとの協業により我々は暗号通貨の利点を活かすための障壁をかなりの程度下げることができる」と述べ、ユーザーに自身のプライバシーを保護するペイメントシステムの提供を目標にしていることを明らかにしています。
暗号通貨の普及の起爆剤となるか
暗号通貨は取り扱いが非常に難しく、数年前に比べるとソフトウェア/ハードウェアウォレットの整備が進み、暗号通貨の取り扱いに必要な技術水準が随分と下がったとはいえ、現金や電子マネー、あるいはクレジットカードに比べると要求されるリテラシーは格段に高いのが現状です。Purismがターゲットにしているのはリテラシーの高いギーク層だと思いますが、暗号通貨とは異なる領域においてMoneroのような継続した開発が行われているプロジェクトとの協業が行われることは暗号通貨圏の発展にとって重要なことです。
Purism Collaborates with Cryptocurrency Monero to Enable Mobile Payments – Purism
Librem 5 – A Security and Privacy Focused Phone – Purism