『マスタリング・イーサリアム』の翻訳に参加しました。

新卒即無職 in アフリカを経て暗号通貨キャリアに2年間フルコミットした結果

21世紀の生存戦略を考える

こんにちは。最近このEmoji:clown_face:を多用しているです。

私はこのブログを始めた2017年の10月に「仮想通貨バブルが崩壊することがあっても1, 2年は食いっぱぐれることはないだろう」と判断し、この業界でフルタイムで働くことを決めました(≠働き始めました(当時はほぼ無職だったので))。

“ほぼ無職”と書いたのは、既にBTCNに何本か記事を寄稿しており若干の収入はあったためです。

当時の「1, 2年は食いっぱぐれることはないだろう」は正しかったので、19年12月時点からの展望もまとめてみたいと思います。

この記事では「中途半端な時期に暗号通貨業界に踏み込んだ人間からの経過報告」と「今後の生存戦略」を簡単にシェアします。

人物Aが人物Bのことを「優しい人」と評していることを知っているときに、「人物Bは自分にとっても優しい人か」を判断するには人物Aと自分の立ち位置を比較する必要があるように、人物Aの業界Cについての感想も人物Aと自分の立ち位置によって、自分にとっての意味は大きく変わると思いますので、そこを念頭に置いてご覧ください。

中途半端な時期に暗号通貨業界に踏み込んだ人間からの経過報告

今のところは問題なく生存しています。

非(ソフトウェア)エンジニアの生存戦略
先日HashHubで「非ソフトウェアエンジニアの生存戦略」という題で簡単なプレゼンをしました(同席したTheCoffeeTimesさんは0xの概要と最新情報についての発表を行いました)。そのときの発表の内容を更に要約して、本記事で公...

参入以前の経歴

現在所属しているHashHubのインタビューでも話したのですが、大学時代の専攻はアラビア語で、ドイツに1年間留学したときはファイナンスを学んでいましたので、技術系のバックグラウンドはありません。

暗号通貨に出会ったのは15年の終わり頃で、1年半くらい勉強しながらブロックチェーンを使ったイスラーム金融の効率化というテーマで卒論を書きました。

大学卒業後に半年だけ東アフリカで暗号通貨とは無関係の仕事(っぽいこと)をし、結局撤退してドイツに戻ってきてから暗号通貨の仕事にフルコミットし始めました。

人脈ゼロからの仕事獲得

暗号通貨業界に知り合いはいなかったので人脈構築はTwitterこのブログのみで行いました。HashHub代表の平野さんとは暗号通貨に出会う以前からアフリカビジネス界隈で知り合っており、私が現在リサーチャーを務めているd10n Labの前々身の新興国ビジネスサロンには古くから加入していたのですが、自分が indivという名前で活動していることを明かしたのは彼からレポートの寄稿依頼があったときでした。

2017年10月は参入時期としては遅いのですが、まだ仮想通貨バブルが崩壊しておらず、早い段階でフォロワーが1000人を超え、時間切れになるまでに月に15本くらいのペースでブログでの情報発信を行い、界隈の古参や優秀な方々と繋がれたことが後の仕事に繋がりました。

幸いにもEthereum系ブログとして注目を集められたのは良かったのですが、同じ時期に現在はLayerXZerochainの開発を行っているOsukeさん半端ないクオリティの技術ブログを開始したときは非常にビビり、彼の劣化版にならないようにポジションの取り方を工夫しました。

CoffeeTimesさんともTwitterで知り合い、直接顔を合わせる前に共同でTokenLabを運営することを決めました(本格始動する前に彼がたまたまスイスまで来る機会があり、ついでにドイツまで足を運んでいただいたので、そのときに初めて顔を合わせました)。

その他にも様々な方と様々な方法で交流しましたが、暗号通貨界隈での出会いはほぼ全てTwitterとブログです。

達成したこと

最初は1ヶ月~3ヶ月程度の短期プロジェクトや海外プロジェクトのための日本語翻訳や日本での規制状況のリサーチなどを行っていましたが、単価が非常に低かった(翻訳業界の相場よりはやや高かったのですが、力を入れようとは思えない水準でした)ので、2018年2月くらいまではEtherを使った裁定取引で生活費を稼いでいました。

私は元々貧乏学生からの新卒海外無職だったので、暗号通貨の保有数は多くなく、裁定取引用にEtherを購入したのが最初のまとまった額の暗号通貨保有でした。裁定取引自体は非常に上手くいったのですが、保有Etherの評価額は2018年に大幅に下落しました。

2018年の春からは比較的単価の高い案件(ほぼ全てリサーチレポートの寄稿)が増え、且つ今も続いている外国企業との独立契約を獲得したため、キャッシュフローが一気に改善しました。ビットコインを継続して買い始めたのもこの時期からです。ただし、以前の赤字生活に対する恐怖が強かったため、1日の食費を5ユーロ(約600円)で抑える生活はその後も続けていました。

8月からはCoffeeTimesさんとTokenLabを設立し、所謂オンラインサロン的な事業を始めました。時期が遅かったこともあって新規会員が止めどなく流入してくる状況ではありませんでしたが、学生や会社員、上場企業の経営者や取引所の社員など様々な方に加入して頂き、第一線で活動する外部リサーチャーの方々も協力して下さいました。TokenLabの運営には膨大な時間を費やしていたので時間給は良いものではありませんでしたが、トータルで見ると得た資産は大きかったです。1年以上運営した後に、TokenLabは加門さん率いるStir譲渡しました。StirはCosmos(ATOM)やTezos(XTZ)のステイキング事業を行っている企業です。

19年10月からは東京本郷に拠点を構えるHashHubに所属し、主にd10n Labのリサーチと企業案件のトークン設計周辺を担当しています。今までは自身の興味に基づいてリサーチを行っていましたが、HashHubでは個人・法人を問わず顧客の意思決定をサポートする意図がより強くなり、且つ国内外の企業との協業の中で得られる知見があるため、自分の今後の方向性と合致していると判断しました。SlackやZoomを通して平野さんと頻繁にディスカッションできるだけでなく、社内のエンジニアの方々との繋がりができたのも大きな利点です。

また、Ethereumの定番技術書になるであろう『Mastering Ethereum by Andreas M. Antonopoulos & Gavin Wood』の邦訳にも参加させて頂きました。11月30日よりオライリージャパンから発売されています。これもTwitterで知り合った方から声をかけて頂いたのがきっかけです。

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獲得した収入

2017年10月~2019年11月の主な収入源は、最初の数カ月は裁定取引と単発契約、それ以降は独立契約とTokenLab、19年11月からは独立契約と正社員雇用から発生したものです。

十分な収入を頂きましたが、複数の仕事をしていたので単純に働いている時間が長い(法定労働時間の1.5~2倍くらい)ため、年収も一緒に上がっているだけであり、時間給に換算するとナントカランキングに載っているような企業ほどではありません。

今は楽しみながら仕事をしているので長時間労働は問題になっていませんが、自分の性格から考えて、楽しくなくなったら一気に崩れるでしょう。

役に立ったスキル

英語と時間が必須条件でした。

無職スタートで暇だったことと、大学生のときに英語の語彙音声学を学んでいたことが大いに役立ちました。

考えてみると、大学では他学部の授業や輪読会にも出てみたり、図書館やオフィスアワーなど全ての大学生に与えられたリソースを使って、様々な分野に手を出したりした(ほとんどは中途半端に終わりましたが)ことが今の生命力に繋がっている気がします。大学生活は最高でした(凡人が配られたカードの利用方法を探るには高等教育を受けられる場に身を置くのが現時点では一番期待値が良い)。

あと、スキルではないですが、私の機会費用が非常に小さかったこともラッキーでした。先述の通り、当業界に踏み込む前は東アフリカから撤退する寸前でしたし、高卒認定経由で入った大学を卒業したときには既に20代中盤を過ぎていました。他の人であれば暗号通貨業界で働くためには手放さなければならないものを、私はそもそも持っていなかったので、特に抵抗なく気軽に時間を投下できました。

反省していること

TokenLabをもっと早く始めるべきでした。実はCoffeeTimesさんはTokenLabを始めた18年8月の更に1年前くらいに「一緒にメディアをやりませんか」と誘ってくれていました。

当時の私のTwitterアカウント(≠indiv)はフォロワー数250人くらいで全くアクティブではなかったのですが、既にフォロワー数の多かったCofeeTimesさんが何故か私に声をかけてくれました。

ただし、私は「無料メディアは儲からないだろうし、利益分配が難しいから」という理由で無下に断るという判断ミスを犯しています:clown_face:

あのときに無料メディアでも始めていれば、その後の展開も変わっていたと思います。当時のオンラインサロンは一定以上のクオリティさえ確保できていれば、参入のタイミングと運営者の知名度で会員数が決まっていました。ここで圧倒的に負けました。

失敗に終わったこと

某Mimblewimble銘柄の開発チームに声をかけ、コンテンツマーケティングをやることでほぼ合意できていたのでコンテンツ作りを始めましたが、結局契約には至らず、こちらで先走って作ったコンテンツは無料で公開することになりました。これは契約を結ぶ前に相手を利する行動してしまった自分がnaiveでした。

ただし、契約を結んだところでお金を払わずに逃げられるケースもあるので、半分でも先払いしてもらうのがベストです(自分の立場が相手よりもかなり強くないと無理ですが)。

これとは別に、コミュニティファンドを有するプロジェクトから予算をもらって活動する計画を立てたものの、自分自身にあまり実績がなかったことやコミュニティファンドといっても結局は中心メンバーのさじ加減で不透明に予算分配が行われる運営実態であったことが原因で、複数のプロジェクトに打診はしたものの予算は得られませんでした。

逆にやることが多すぎて健康を害した失敗もあります。

そのときはスケジュール管理を疎かにしたせいで、仕事と勉強の締め切りに加えて複数回の長距離移動と2週間程度の外泊が2ヶ月くらいの期間に集中しました。毎日時間に追われる生活をした上に、そのパフォーマンス如何では自分の中期計画を大きく変更しなければならなかったため、プレッシャーが大きく、結果として円形脱毛症を患いました。

これ以外にも自律神経失調症になったり眼精疲労に伴う自己嫌悪(?)に陥ったりもしました。

体調管理は大事なのですが、一方で「稼げるときに稼がないとチャンスがなくなる」「学べるときに学んでおかないと老化が進行していく」のも事実なので難しいところです。

今後の生存戦略

「文化への迎合」と「弱者からの搾取」が最適解であることを前提に生存戦略を考える
本記事では趣向を変えて、「最適解としての弱者からの搾取」を切り口に「生存戦略」を考えていきたいと思います。真面目に書いていますが、全て私個人の妄想であり、何ら科学的な根拠はありません。また全てを詳述せずに、一部で説明を簡略化しています(特に...

現状

赤字生活を脱却した後に収入なしでも3年間は生きていけるだけの貯蓄を確保したので金銭的なゆとりはできました。

それに加えてドイツの大学に入学するために必要となるドイツ語の資格を取得し、人生の再起動をしたくなったら学費無料で学び直すことを選択肢の一つに加えました(とはいえドイツ生活に若干嫌気が差し始めているため、この選択肢の魅力は大幅に減少しています)。実は今年の10月からインフォマティクス学部に入って、働きながら3年間ほど学ぶ計画もあったのですが、諸事情あって修正しました。

今は資金と能力開発の両面で最低限のセーフティネットを確保できているので、「リスクはあるがアップサイドが大きく、期待値が正である機会」の発見・創出と利用を試みています。

私はエンジニアでも営業でもなく、やや特殊な業務を請け負っており、今はまだ需給バランスの取れていないニッチ市場で活動しているわけですが、業務遂行の過程で今後も向上していくであろう職能の汎用性には大きな不安があります。

さらに、個人としての事業構築も徐々に仕込んでいきたいため、無理なく取れる機会はどんどん取っていく合理性が高くなっています。

この業界はどうなのか

既に何らかの実績がある方が、期待値計算をした上でアップサイドを狙うために参入するのは特に問題と思いますが、これからキャリアを築いていこうとする優秀な学生が暗号通貨業界に進むか否かを決断するのは、昔も今も変わらず難しいだろうというのが正直なところです。

なぜなら、暗号通貨・ブロックチェーンを問わず、業界自体がまだ自走できている状態ではないので、その業界に属している企業が自前のビジネスでキャッシュを生み出しながら、市場の創造や攻略のために必要な資本を積み上げていける体制を構築する難易度が非常に高いためです。

ただし、成長余地のある領域ではあるので、業界と企業の両方で正しい選択をすれば倍速で自身の資本を増やすチャンスはあります。

入社する前にその企業が現在何でお金を稼ぎ、どの程度のキャッシュを得ているのかを理解しておけば、(範囲の広い粗い予測を受け入れることも含めて)大体のことは想定の範囲内になるので、自分の生活への負の影響をある程度は抑えることができます。私はHashHubに入る前に、代表から聞き出したことを踏まえて、自分の雑感や期待されているであろうことに対する温度感をGoogle Docsにまとめて「自分はこう判断しているが認識にずれはないか」と確認しました。

外部の人間としてあれこれ聞いた上に、頼まれてもないのに事業の成功確率や入社によって私が得られるリターンの期待値をいくつかのシナリオを作って分析したものを勝手に送ったわけですが、「なかなか良い分析とモデル化ですね笑」と返ってきました。

色々聞かれることを嫌がる経営者や人事担当者も中にはいると思いますが、リクルーティングの文脈では論外だと思います。

とりあえず生存していきたい

自分が達成したことは時期と運に大きく依存しているため再現性はほとんどないでしょうが、私の失敗体験や、ある程度の蓄えができたにも関わらず未だに抱えている不安や懸念は参考にして頂けるかもしれません。

今後は今以上に多様な戦略を個人が取れる時代になると思うので、フリーランスやスタートアップ以外の選択肢として、優良大手企業に属しながらブロックチェーンに関わりつつ、休みの日に暗号通貨を触るというスタイルもありだと思います。

ちなみに「暗号通貨業界には優秀な人が多いから」とか「ブロックチェーンはIT領域で、しかも流行りそうだから」という理由で参入するのは辞めたほうが良いです。なぜならどの業界にも優秀な人はいるし、もっと低リスクで流行に乗る方法は他にたくさんあるからです。

「自分が持っている変数を”優秀”と解釈してくれるのがこの業界だから」という理由の方が健全だと私は感じます。結局のところ、自分にとってのa great vantage pointがどこにあるかだと思います。

とりあえず、私の今の収入源ポートフォリオは比較的安定していますが、半年後にゼロになる可能性も低くはないため、BTCとETHの価格が10倍程度になることを希望しています:clown_face: