【これから「分散型取引所」の話をしよう】分散型取引所はなぜ重要か? 1/n

暗号通貨界において盛り上がりそうで盛り上がらないプロジェクトの一つに分散型取引所、通所DEX( Decentralised Exchange)があります。我々が通常ビットコイン等の暗号通貨を売買する際には、BitflyerやCoincheckの取引所を使います。オルトコインの場合はPoloniexやBittrexかもしれません。これらは所謂中央集権的な取引所で、企業や特定の組織によって運営されています。そして重要なことは取引所に保管されているビットコインのプライベートキーは取引所によって管理されており、ユーザーの管理下にはないということです。

取引所に暗号通貨を保管しておくのはリスクがある

ビットコインの所有権は秘密鍵というパスワードのようなものに紐付けられており、ブロックチェーン上に記録されているビットコインは、この秘密鍵がなければ移動させることができません。つまり取引所でビットコインを1BTC分購入した場合、たしかにあなたのアカウントには1BTC分が反映されるのですが、この1BTCをビットコインのブロックチェーン上で所有しているのは取引所に他なりません。

たとえば取引所がハッキングの被害に遭ったり、あるいは倒産してしまった場合、あなたの1BTCはあなたのコントロール下にはないので、あなた自身の力でこの1BTCを動かすことは出来ません。取引所が何らかの形で保障してくれればいつか返ってくるかもしれませんが、完全に取引所次第です。

このように取引相手が何らかの理由で取引を遂行できなくなるリスクのことをカウンターパーティリスクといいます。カウンターパーティリスクの好例は当時世界最大のビットコイン取引所であったマウント・ゴックスの倒産でしょう。「システムに弱いところがあって」顧客の資産が喪失した、というのは当時マウント・ゴックスのCEOを務めていたマーク・カルプレス氏の弁です。マウント・ゴックスのハッキング騒動からの倒産には様々な興味深いストーリーがあるのですが、またの機会にしたいと思います。

DEXはプライベーキーを保持したまま取引を行う

中央集権的取引所とは対象的に分散型取引所においては自身のプライベーキーを保持したままトレードを行うことが可能です。プライベーキーを自身の管理下に置き続けることの重要性はいくら主張しても主張しすぎることがないほどに重要なのですが、DEXには様々なデメリットが存在するため、現時点でも中央集権的な取引所が使われ続けています。私も暗号通貨をトレードする際には中央集権的な取引所を使用します。以下にそれぞれのメリットとデメリットを表記します。

中央集権的取引所のメリット 中央集権的取引所のデメリット
  • 手数料が安い
  • 取引が早い
  • UIが洗練されている
  • 法定通貨の入出金が可能
  •  カウンターパーティーリスクに晒され続ける
  • アカウント凍結のリスクがある
  • KYC等の手続きのため個人情報の提供が必要
非中央集権的取引所のメリット 非中央集権的取引所のデメリット
  • プライベーキーを自身で管理できる
  • 個人情報の提供が不要
  • 手数料が高い(改善されつつある)
  • まだまだ発展途上で持続性のある開発環境が整っていない
  • ベースとなるブロックチェーンには依存する
  • 法定通貨の入出金が不可能

DEXは高コスト且つマーケットメイキングが難しいシステムだった

DEXは中央集権的取引所のように売買参加者たちが一箇所に集まって取引の注文を行い、取引所によってオーダーブックが管理されるような形ではなく、オンチェーンもしくはオフチェーンでオーダーブックの管理を行い、オンチェーンで約定を行うという形です。オーダー処理の全てをオンチェーンで行う場合、新規オーダーやオーダーの変更がある度に、ブロックチェーン上のデータを書き換える必要があります。Ethereumの場合、スマートコントラクトの状態変更にはEVM(Ethereum Virtual Machine)を使用するためのコスト(ガス代と呼ばれます)が必要です。そのためオーダー処理そのものに、まずコストがかかってしまいます。これは中央集権取引所では起こらないことです。中央集権取引所ではオーダー処理は全てサーバー上で行われるので、新規オーダーやオーダのキャンセルを何回行ってもユーザー側にコストは発生しません(サーバーが重たくなるので、取引所はサーバーを増強する必要がありますが)。

マーケットメイカーがいなければ取引は成り立たない

メイカーというのは、取引を先に提示する側のことです。Bitflyer等の取引所に行けばオーダーブックが表示されていますが、そこに表示されている注文はすべてメイカーの注文です。

こういうものですね。売りと買いの両方の注文がオーダーブックに並べられています。メイカーに対して、既に提示されている注文に対応する形で注文を行う側をテイカーといいます。注文のMakerとTakerなので分かりやすいですね。

上のオーダーブックはKrakenという欧米の取引所のものですが、Krakenではメイカーとテイカーで手数料体系が異なり、メイカーの手数料はテイカーの半分程です。それはメイカーは、市場に流動性を提供する重要な役割を果たすからです。普段あまり意識することはありませんが、ビットコインにおけるメイカーは裁定取引者やトレードBotが果たすことが多いです。当然裁定取引者やBotトレーダーは自身の利益を追求しているわけですが、市場の流動性確保のために非常に重要な存在なのです。なので何らかの理由でトレードBotが撤退した場合、その取引所の流動性は目に見えて低下します。各取引所がメイカーにボーナスを与えたり、取引高に応じて賞金を分配するキャンペーンを行ったりするのはこのためですね。流動性がない取引所に価値はありません。

オフチェーン処理によりDEXでもマーケットメイクできるようになりつつある

上述の通りDEXにおいてマーケットメイクは高コストだったので、取引所にとって重要な要素である流動性の確保ができませんでした。しかし状況は変わりつつあります。アトミックスワップやオフチェーン処理の発展によって、オーダー処理を逐一オンチェーンで処理することなく、低コストでオーダーブック、またはそれに準ずるものを処理できるようになりつつあります。それには分散型プラットフォームとして確固たる地位を築いているEthereumの発展とオフチェーン技術の開発が大きく寄与しています。

本シリーズでは次回、Ethereumネットワーク上に分散型取引所を構築することを目指す0xというプロジェクトに焦点をあてて、今後の分散型取引所について考察していきたいと思います。