ビットバンクのBitcoin Goldに対する声明のどこが素晴らしいか

BitbankからBitcoin Goldのハードフォークに関する声明が発表されました。Bitcoin Goldはビットコインからフォークすることにより、現行のビットコインとは異なるコインを作り出そうとしています。Bitcoin Goldの仕様については詳しくは書きませんが、ASIC耐性を持ちGPUでマイニングできる点が特徴的です。

Bitcoin Goldはなぜ生まれるか

Bitcoin Goldが登場した際にまず私の頭のなかに思い浮かんだのは「SegWit2Xが大部分のマイナーの支持を得て、その結果Bitcoin Coreのハッシュレートが大幅に下がり、まともにビットコインが使えなくなった際の保険としてCore陣営が用意した脱出ポッド的なものだな」ということでした。

ただし現在はそのような考えは持っていません。公式サイトにおいてプレマイン(開発者が予めいくらかのコインをマイニングすること)が発表されたり(現在は削除済み)、ハードフォーク5日前になった現在(10月19日)においてもソフトウェアの開発が完了していなかったりと、対応があまりにもお粗末で、さすがにこれをコア側が仕込んでいるとは思えません。また既存のビットコインとの差異も、POWアルゴリズムのSHA256からEquihashへの変更と採掘難易度調整頻度の変更(2週間毎から1ブロックごとへ)程度で、思想や技術に際立った特徴がないのです。

ビットバンクの声明を読む

ビットバンクの声明文へは以下のリンクからアクセスできます。

Bitcoin Goldに対するビットバンクの対応方針について

主に3つのパート「対応について」「Bitcoin Goldについて」「今後予期されるHFについて」から構成されており、それぞれにユーザーに対する配慮と取引所としての責任感が見て取れます。

対応について

特に3が良いです。

当社は、BTGに限定されず当社の裁量に基づき当該仮想通貨の取り扱い可否を決定するものとし、次に掲げる事項などに該当する場合、付与を行わないことがあります

  • リプレイ攻撃保護が困難であり、お客様資産の保全ができない場合
  • プロトコルに脆弱性があり、不正にトランザクションを送信できるなどのバックドアが含まれる場合
  • 反社会的勢力との関わりがあるか、反社会的行為に携わっている場合
  • その他、当社の裁量により、取り扱いが困難であると判断した場合

2番目のプロトコルの脆弱性とバックドアに対する言及が良いですね。本記事の後半で少しだけ触れるビットコイン開発者のJimmy Song氏も主張していることですが、ネットワークの分岐というのは、個人情報にたどり着くための情報がフォークした分だけ増加するので、セキュリティ上全く好ましくありません。「フォーク後にコインを合算したら合計額が増えた」というケースももちろんあり、利益追求を行うのは投資家として当然ではありますが、ネットワークの分裂はプライバシーの低下や不正トランザクションと隣り合わせの危険な賭けであることを十分に認識するべきです。

この点において取引所が踏み込んだ言及している点において素晴らしいと言えます。

Bitcoin Goldについて

プレマイン、コード未完成、リプレイアタック、リスケジュールの可能性に言及しており、Bitcoin Goldについての知識がない人間にとっても分かりやすいまとめになっている点が素晴らしいです。暗号通貨は最終的に自己責任の世界ですが、日本語で暗号通貨関連のまともな情報を得るのは難しいので、このように取引所が必要最低限の説明をする姿勢を見せるのはユーザーにとって有り難いことです。

今後予期されるHFについて

こちらもやや長いですが一部を引用します。

BTGに関しては特別な声明であり、今後予想される仮想通貨のハードフォークに伴う新たな仮想通貨の発生に関しても、顧客資産保全および当該仮想通貨におけるリプレイ攻撃保護対策、その他セキュリティ上のリスクなどを勘案した上で、当社の裁量に基づいて取り扱いの可否を決定いたします。

なかなか含みのある言い方になっていますが、セキュリティの観点に基づいた顧客保護を念頭に置いていることが窺え好感度が高いです。

ハードフォークは今後も悪用され続ける

ビットコインに限らずメジャーとなったコインからのハードフォークは今後も発生し続けるでしょう。取引所は一定以上の規模のハードフォークが発生するたびに対応を迫られ疲弊していき、中小規模の資金や技術に乏しい取引所は淘汰されていくと思います。ビットコインユーザーとしては、不必要な(この判断が難しいのですが)ハードフォークに対応するために暗号通貨界の貴重な技術者の時間や資金が投入されることには危機感を覚えますが、残念ながら仕方ないことです。

Ethereumのハードフォーク時に予想に反してEthereum Classicに価格がつき、Bitcoin Cashにも同様に価格がつきました。そしてETCとETHの合計額がHF前の価格を上回ったように、BTCとBCHの合計額もHF前の価格を大幅に上回り、HF前にBTCを保有していた人々は、ただハードフォークを傍観するだけで10%~20%も資産が増加したのでした。

取引所は受託者責任があるため常に訴訟などの法的リスクに晒されており、また取引所間のユーザー獲得競争もあり、常にユーザーの要望に答え続けなければビジネスを継続できません(ハードフォークコインを付与する取引所としない取引所があれば、ほぼ全てのユーザーが前者に移動するため)。

しかしBreaking Bitcoinカンファレンスでビットコイン開発者のJimmy Songが指摘したように、「フリーランチなど存在しない」のです。過去の事例においてネットワークが分裂して合計資産が増えたのは事実ですが、これもICOバブルと同じで永遠には続かないでしょう。ユーザーにもリテラシーと自制が求められるところですが、ユーザー間にも取引所間同様にゲーム理論における囚人のジレンマ的な関係が存在しているため、結局のところ全利害関係者が合理性のもとに経済的利益を追求した結果、最終的に全員が大きな利益を取り逃すという結末もあり得ます。こういった状況についての考察は近いうちに行いたいと思います。

このような状況の中で法人によって運営されている中央集権的な取引所が果たす役割は大きいと私は思います。

色々とビットバンクを褒めちぎるようなことを書きましたが、私個人はビットバンクの取引所はほぼ使っていません笑

ビットバンクトレードでは追証なしでFXができたり、bitbank.ccではオルトコインのペアもあったりと期待はしているのですが出来高が少なく、スプレッドが大きいので使いづらいためです。

とはいえビットコインニュースやブロックチェーン大学校など関連事業における暗号通貨界に対する貢献は大きく、日本の暗号通貨関連企業の中では最もビットコイナーらしい企業だと思っています。