【これから「分散型取引所」の話をしよう】分散型交換所AirSwapの概要 4/n

Airswapは少し前にICOで資金調達を行ったプロジェクトで、P2P型のERC20準拠トークンの交換所の実現を目指しています。過去に0xや0xプロトコルを用いたRelayerとして機能するRadorを紹介しましたが、0xが取引所を志向しているのに対して、Airswapは交換所を志向している点で方向性が異なります。特色としては手数料体系に工夫がある点で、district0xはオーダーやオーダーのキャンセルにも手数料が掛かり、0xはオーダーはオフチェーン処理なのて手数料は掛かりませんが約定に(Relayerの利益が上乗せされて)手数料が掛かる仕様になっているのに対して、Airswapはユーザー間のP2P交換をサポートする役割を果たすので手数料が掛かりません。しかし、district0xや0xにあって、Airswapにはない機能も存在します。本記事ではAirswapの概要について紹介したいと思います。

これまでの分散型取引所に関する記事は以下をご覧下さい。

【これから「分散型取引所」の話をしよう】分散型取引所はなぜ重要か? 1/n

【これから「分散型取引所」の話をしよう】0xプロトコル上のリレイヤーとは何か? 2/n

【これから「分散型取引所」の話をしよう】ERCトークン取引所Radar 3/n

以下はAirswapのホワイトペーパーを参考にしています。

Airswapがオフチェーン+P2Pを志向する理由

Airswapは約定以外のオンチェーン処理とP2P型のコミュニケーションを重視していますが、その理由として以下の3点が上げられています。

  1. スケーリング
    オンチェーンオーダーブックはスケールしない

    オンチェーン処理とは、その処理を実際にブロックチェーン上で処理するという意味です。ブロックチェーン上で処理するためには、ブロックチェーンへの書き込みが必要なので、書き込み費用としてガス代(ETH)が必要です。またオンチェーンの処理速度はEVM(Ethereum Virtual Machine)の処理速度に依存します。このような制限を受けないために、オフチェーンで処理するわけです。

  2. プライバシー
    オンチェーンオーダーブックはマイナーによって処理されるため、オーダーがマイナーによってブロック書き込まれる前に、マイナーはオーダー内容を閲覧することができ、フロントランニング等の問題が起こり得る

    これはオンチェーンのみならず、中央集権的な取引所でも懸念される問題点ですね。ここで注意が必要なのは中央集権的な取引所もオフチェーン処理であるということです。中央集権的な取引所とは、bitFlyerやPoloniexなどの中央集権的主体によって運営されている取引所のことです。取引所内での売買はブロックチェーンには保存されず、あくまで取引所内のデータベースに保存されるだけで、入出金処理の際に初めてチェーンに記載されます。実際、取引所の中にはフロントランニングの悪用とまではいえないものの、明らかにこちらの新規オーダーに反応して既存のオーダーを動かしているところがあります。Airswapは、P2Pでメイカーとテイカーを直接結び、トークンの交換をスマートコントラクト経由で行うことで、上述の問題を回避しようとしているようです。

  3. フェアネス
    オンチェーンオーダーブックは物理的に分散したノード間のレイテンシーを生じさせるため、地理的条件によっては条件に優劣が発生する

分散型取引所以外にも言えることですが、ブロックチェーンはマイナーやバリデーターによって保持されており、マイナーやバリデーターとして機能するハードウェアは地理的に分散しているため、その分散によって取引条件に優劣が生じてしまうということです。

Indexerプロトコル

トークン交換成立の仕組みは以下のように図示されています(以下の図は全てAirswapのホワイトペーパーより引用しています)。

  1. テイカーがメイカーに対し取引を要求
  2. メイカーは取引を提供
  3. テイカーがコントラクト上で約定

APIについては詳述しませんが、オーダーはgetOrderで取引を要求、provideOrderで取引を、クオート(見積り)も同様にgetQuoteとprovideQuoteが用意されています。

上図ではオーダーブックが存在しないため、テイカーは市場にどのような取引提案があるのか見つけることができません。その問題点を解消し、メイカーとテイカーを結びつける役割を果すのがIndexerです。

以下の図をご覧下さい。

メイカーがIndexerに取引意思を示し、Indexerはメイカーの取引意志をまとめて、テイカーがそれらを閲覧できるような機能を提供します。上図ではメイカーが1つしか描かれていませんが、複数のメイカーがあっても構いません。テイカーは自身の希望に応じてIndexerを用いメイカーをスクリーニングした後に、テイカーはオーダーAPIを用いてメイカーに取引を要求することができます。

Indexerとのやり取りを行うためのAPIも用意されており、取引意思の表示と取り消し、取引意思の閲覧等が可能です。

Oracleプロトコル

Oracleはメイカーとテイカーに価格情報等を提供する機能を果たします。APIを用いることによって、メイカーならびにテイカーは、オーダーを行う際の参考価格を取得することができます。

0xとは対象的にAirswapにはオーダーブックが存在しませんが、IndexerとOracleを用いて、メイカーとテイカーに取引に必要な機能と情報を提供する仕組みになっています。

Airswapのトークンモデル

Airswapのトークン(AST)には現状二つの用途があります。

一つはIndexerを用いる際に、ASTをロックするというものです。ユーザーはIndexerを用いて自身の取引意思を表明するために、一定のAST(現在100ASTを予定)を一定期間(現在7日間を予定)、ロックする必要があります。100ASTを7日間ロックする毎に、Indexerに10の取引意思を表明することが可能になります。

もう一つは、Airswapに実装されるオラクルの機能に関して投票を行うためにはASTのホルダーになっていなければならないというものです。Airswapはいくつかのオラクルを実装予定らしいですが、そのオラクルの機能に関してASTホルダーは投票ができるようになるようです。ただし、オラクルの具体的な機能に関しては現在開発中で、詳細は不明です。

誰がIndexerとOracleを運営するのか?

以前Radarに関する記事を書いた時にも言及しましたが、分散型取引所普及の壁となっているのが、中央集権型取引所に比して非常に高い手数料です。分散型取引所の利点を理解しつつも中央集権型取引所が曲がりなりにも正常に運営されている中、わざわざ高い手数料を払って分散型取引所を使う人は少ないでしょう。

Airswapはこの点において、先発の0xやKyberNetworkと差別化しようとしているように見受けられます。トークンモデルの項目でも紹介したように、現時点でASTはIndexerへの取引意志の追加のためにロックされるのみで、消費されるわけではありません。P2P交換でありながら、オーダーブックに類似したIndexerを機能させることによってユーザーの利便性を確保するのがキーのように思われます。

しかしIndexerやOracleは誰が運営するのでしょうか?運営するためのインセンティブは存在するのでしょうか?これについてはホワイトペーパーや公式サイトには言及がありません

そこでAirswapの開発チームにこの点について問い合わせたところ、Airswap Co-FounderのMichael Oved氏から回答を頂きました。

質問
「ホワイトペーパーを読んで、IndexerとOracleがいかに重要か理解できました。しかし経済的インセンティブなしに、誰がこれらの機能を提供するのでしょうか?私の理解が正しければ、Airswapには取引手数料がなく、またIndexerやOracleの使用料も徴収されず、ASTのロックのみです。

そのような状況で誰が持続的にこの機能を提供し得るのでしょうか?Airswapチームが公式で、しかし無料で提供するのでしょうか?」

回答
「第一ステップとしてAirSwapチームがIndexerとOracleを運営します。短中期的にはASTのトークンセールで集めた資金を使って、これらの機能を提供します。また我々は長期的にはスケーラブルで、分散化されたIndexerの実現を目指します。それにはロジックのオープンソース化やEthereumネットワークのスケールを前提としてオンチェーンでの管理も考えられます。

またOracleのトラスタビリティを向上させるために、ASTホルダーがオラクルのガバナンスに参加できるような投票メカニズムを実装中です。」

分散型取引所が徐々に盛り上がってきている雰囲気を感じますが、やはりまだ手数料、利便性、セキュリティ、サードパーティへの依存などはどれもトレードオフで、万能な手法はなさそうです。

EthereumのEcology

AirSwapや0xはオフチェーン志向ですが、取引の約定はEthereumネットワークのスマートコントラクトを用いてオンチェーンで処理する必要があるので、分散型取引所のスケールはEthereum自体のスケールを前提にします。

既に多くのアプリケーションがEthereumネットワーク上に構築されており、それらのプロジェクトの成否の一部はEthereum本体の開発にかかっているといっても過言ではありません。それ故にEthereumのアプリケーションレイヤーの開発者が、Ethereum本体の開発に貢献するインセンティブが存在します。

Ethereum経済圏にはまだまだ課題が多数存在しますが、そのような生態系ができつつあることは実に刺激的ではないでしょうか。


Whitepaper
The AirSwap Token — AIRSWAP